2010年1月追記

お正月にいただいた年賀状の1枚に、この老舗旅館の女将さんから年賀状が届いた。泊めていただいたのは2007年。一瞬何の変哲もない新年の挨拶文と思ったが、脇には達筆で添えられたていねいな手書きの一文があった。「昨年旅館を閉めました。これまでのご厚情を有りがたく深謝申し上げます。ご健勝を念じております。」 衝撃を受けたのは言うまでもない。本当の歴史にあふれた、日本の旅館らしい旅館がまた一つ消えたのかと思うと寂しさでいっぱいだ。お世話になったのは一夜であったが、もっとも心に残っていた旅館だけに、このページにせめてもののお礼の気持ちとして、このように閉館したことを告げるための手を加えることにした。

本当に長い間ご苦労様でした。心に残っている温かい思い出を、いつまでもますます大切にします。心からありがとうございました。

白老のアイヌ民族博物館見学を終えて、今日の宿泊を探す。

苫小牧を通り抜けると、今回の旅の大目標である北海道沿岸一周が達成されたことになる。

そこで前回の思い出の地、えりも町庶野の老漁師田村さんとの再会めざして、えりもに向かうことにする。

そのための宿泊地として、日高地方を浦河国道235号線に沿って南下すると、途中に昨年合併によって新しく誕生したむかわ町が目に入り、海沿いであるらしいことから今日の宿泊地に決定した。

この旅館には長い歴史と風格があって、飛び込みではなく、必ず要予約とある。心配しながら電話で泊まりを依頼すると、すぐさまOKの返事が戻ってきて一安心。

わくわくして到着すると、通りに面した堂々たる構えで、一目で長い歴史と重厚な風格を感じさせる。

正面に車を停め、玄関に入ると品の良い女将らしき人が出てきて、先ほど予約したことを告げると、丁寧に、最近目にすることのなかった床に三つ指ついて、気品にあふれた笑顔と誠に丁寧な作法で迎えられた。

私がわざと、突然のお電話でしたのによろしいですか、と訪ねると、先程の電話の声で確認していますのでどうぞお上がりください、という。一瞬で見抜かれたことにうれしくなって、私も以後の態度が豹変したことは言うに及ばない。

女将によると、布施旅館は明治17年までさかのぼる。創業開始後明治43年(1910年)に現在の建物(上下の写真)が建てられたという老舗である。館内にもその面影がたくさん残されていた。(下記写真参照) 東北から鵡川に渡った布施建蔵が創業した。新潟から大工を呼び、本州の材木を選び抜いて使ったといいう、明治43年に旅館は建てられた。昭和30年に増築しているが、その部分でも来年で満50歳になる。ほとんど手を加えることなく健在だ。左手に大きなけやきが一本あって、ちょうど真っ赤に紅葉していた。


正面写真。停車している白い車は私の愛車だ。
右手のイチョウのすぐ右手に、上の写真のようなケヤキが一本植えられているが、見事に真っ赤に紅葉していた。

 


中に入ってすぐに掲げられている創建当時に描かれた正面の絵。

2枚を比べると100年を越える歴史が一目瞭然だ。

女将。姉妹だそうだ。

電話室
だがその電話機も時代の遺物になりつつある。

一階の廊下にそれと無しに飾られていたカンテラ風の道具にも歴史が感じられる。

2階に上がる階段は途中で2方向に分かれている。いかにも古風な造りが、当時を忍ばせる。 階段は見事に磨き抜かれて、黒光りを放っていた。この階段を上って左に進む。 階段に向かう前の、すぐ右手にある部屋。障子に入った模様入りの曇りガラスは、割れたら現在では代わりは手に入らない代物、と言う。

2階廊下。

材料の古さに歴史を感じるが、きちんと掃除が行き届いていて、光を放っている。

これまで何人の人がここを踏みしめ、部屋に足を運んだことだろう。

 

 

  

 

案内された部屋は、壱号室であった。 部屋の中央には、床の間があり、部屋としても高級であったことがわかる。落ち着いた雰囲気が素晴らしい。 反対側にも額縁がかかり、部屋に込めた品位が伺われる。昔のままだと言うことだった。
冷え込み始めた部屋の暖房は、薪ストーブであった。何よりもうれしい。ストーブ台や炉箒も何年ぶりだろうか。 薪ストーブは木の香りが漂い、燃える音も楽しめて、思いがけない懐かしさに、郷愁溢れて大満足だ。 部屋に張り巡らされた煙突にも温もりを感じる。


快適な部屋、ストーブの温もりに、つい寝る前に一杯

 


朝の食事は豪華

いくら・とろろ・貝・ピーマン・アスパラカスとシメジの油炒め・アサリとシジミのみそ汁・漬け物・のり・牛乳・ご飯・柿

まあこんなにたくさんの素材を味わわせて頂き心から感謝。

女将さんのもてなしを受けて、盛りつけを待つ家内も緊張気味。 ご飯を盛る手つきも一味違う。


まるで殿様気分。

朝からくつろいで、薪ストーブの暖かさの中で、ゆったりと食事。最高の気分だ