調べるきっかけは?

8月17日北海道在住の友I君からのメールでした。

「テレビで日光でしか見れないというシモツケコウホネというの紹介されていたけど福井君の住まいの近くで見れるの?」から始まった。

「現場に行ったことがありませんが、距離としてはかなり至近距離です。あっても数キロでいつでもいけるというのも気を許していました。9月始め頃まで花は見られるとのことですので一度撮影に行ってみます。」

 

事前調査

花の時期は知人から9月初旬ころまでと聞いていました。その日が迫っていることは知っていましたが、とりあえず現地はを知らなかったこと、行く前におよその場所を特定しておかなければ、と花に詳しい隣の友人に声をかけました。

そのご夫婦は何回も入っているそうで、速答で下小代駅のすぐ近くということでした。足に自信のないことを知っているその友人は、私でも歩いて10分で十分行けると聞いて安心。時期はそろそろ遅くなっているので早い方がいいかもしれない、と親切なアドバイスをもらいました。

すでに他の予定が入っていたので、心は少々焦り気味。

 

いよいよ調査

9月に入っても所用が続き、12日になって訪問してきたお客を東武日光線明神駅まで送り、次の駅が下小代駅なので、その足で軽い気持ちで現地に向かいました。

 

見学結果は左側の本文欄に記載。

 

きっかけとなったテレビとは。

8月13日放送 7:30 - 8:00 NHK総合
NHKニュース おはよう日本 (中継)「栃木県日光市」-「シモツケコウホネ」

全国版のこの放送は、連続ドラマのすぐ後の放送であったこと、当日はお盆の入りの日であったこと、多くの人が帰郷して家族団らんしていたことから、視聴する方も多かったらしい。
私は見ていなかったが、知らせてくれた北海道のI君はその一人だったらしい。

この番組を見た行動派の一人が「シモツケコウホネ」についてホームページにまとめて掲載している。詳しく、見事に元を得たページであるので、本人の了解は得ていないが、ここに寄り多くの人への紹介を兼ねてリンクさせていただく。

 

今市の水を守る市民の会

日光市(旧今市市を含む)は、美味しい水の里として知られているが、このことから「今市の水を守る市民の会」が発足している。ホームページはこちら

活動の様子は、会報「だいや川通信」で見ることが出来ます。

 

シモツケコウホネと里を守る会

代表 柴田由子 氏
 (0288-27-0923
発足の様子はこちら

 

左の本文に出てくる、偶然に出会いながらもいろいろ説明いただいた塚崎庸子さんは、「今市の水を守る市民の会」の中心となって活躍している方だった。幸運だった。

 

代表 柴田由子氏の住居は写真手前左にある。さらに詳しい話を聞かせていただこうと立ち寄ったが、代表は留守だった。しかしご主人が在宅しており、顔を見てびっくり。
ご主人は、現職時代の同僚だった。なんとなんと世間は狭いのだろう。

 

栃木県版レッドリストに掲載されています。

住所 栃木県日光市小代

我が家から約6km弱 車で10分弱 我が家の庭のごとき近くで、普段散歩していたところから僅少の距離にあった。

 

       

東武線下小代駅前の道路を北へ数十メートル進むとすぐにこの看板。折角の駐車場だったが、先に見えるアスファルトで舗装整備された道路には他の車が見られず、交通に支障なしと勝手に判断して、設置された看板は見なかったことにしてそのまま直進させてもらった。

 

歩くことが前提になっているようで、このような案内板が建てられていた。

 

まわりは典型的な田園地帯だ。散見できる家々の間の田んぼには、稲穂が間もない収穫を待つように金色にかがやき始め、頭を下げ始めていた。

 

再び道路わきに数台止められるだけの駐車場があった。道路は舗装が切れ、そこに順路を案内するこの看板が現れたことから、てっきりこの辺から狭い道路にはいるものと早合点し、車を駐車して左にまがる農道らしき道を進んだ。すると前方に川。ここかと覗いてみるが、川幅が広く、水量もかなり多い。案内板も見あたらない。どうも様子がおかしいので先ほどの地点に引き返すことにした。

案内板のところで周囲を見直し、ふと足下に目をやる1本の小さな川が流れていた。今度は予想よりかなり小さいけれど脇を歩いてみることにした。

 

この川が「シモツケコウホネ」の自生地である。これが全景であるから非常に狭い範囲だ。右の道路だけ保護のために未舗装になっているが、近くここも舗装になるそうだ。

 

すぐ前の静かに流れる水面に、わずかに顔を出している黄色い花を発見。「シモツケコウホネ」との初面会だ。

 

顔を上げると、目の前の土手に小さな看板が立てられていた。間違いないことを確認できたものの正直言ってやや拍子抜けしてしまった。それは頭の中に花の群落のイメージがあったからだ。自分の都合でこんなに遅れて、花の季節がもう閉じようとしている時期であることを恥じたが、一方では数は少なくなるものの10月でも見られるそうだ。

 

シモツケコウホネは沈水性で、花だけ水面に出しているところが最大の特徴だ。葉の部分は水面下にある。上の写真では水面下に緑の葉が見えるが、これはシモツケコウホネの葉ではなく、「ミクリ」という抽水植物で、「コウホネ」同様水生植物である、と案内にはある。

 

上と同じ場所での写真。

 

ツボミの段階のシモツケコウホネもあった。守る会の話によると、花の数は少なくなっているが、10月でも見られるそうだ。

 

ここにはツボミとすでに開花した花がいっしょに見られる。

 

水量が多くて、水上に出ている茎も水面すれすれだ。水中の明るい緑の草は「ミクリ」で、暗く見える葉がシモツケコウホネの葉だ。

 

1枚のアングルに、花が一番たくさ映ったのがこの1枚だ。

 

開花した満開のシモツケコウホネ。これがあったのでよかった。

 

やがて花が枯れるとこのような実になり、再び水中に没する。

 

この実が種になるが、実際は水流が早く、すぐ下には着床せず流されていくそうだ。しかしながら下流にはわずかには見られることもあるが、ほとんど群生は見られない。

ここの守る会のように、地域の人々に愛され見守られながら、群落が大きくなっていって欲しいものだ。

 

群生しているところの全景である。長さは60mぐらい。ここから上流(写真左側)に20mぐらいこのような流れが続くが、驚いたことにその上流はコンクリートのU字溝で固められており、ここから上流にはシモツケコウホネは全く見られない。

 

群生する一番上の部分には、次に拡大した写真のような立て札が建っている。位地ががわかるように撮影した。 

 

単位は赤線が10cm。現在の水位は18cmということになる。適当と思った水位だが、守る会の話によるとこの水位はあまりにも深い。つまり水量が多すぎて流れも急になっており、棲息の条件としてはきわめて良くないらしい。理想は10cm以下だそうだ。

 

生息環境調査のため気温の計測が行われている。発見されて調査の結果新種であることがわかり、以後この計測が行われている。絶滅危惧種であることから栃木県上都賀農業振興事務所が行っている。

 

帰りかけていたときに、二人のご婦人がやってきた。我々と同じように見学に来たものと早合点して、「ちょっと時期が遅かったようだけど、まだ何本か見られますよ。」と親切のつもりで声をかけた。ところがその方たちは度々見に来てるという。

そんなに度々眺めるほどのものではないのに、と不思議に思い聞いてみると、この方たちは「シモツケコウホネを守る会」のメンバーの一員だった。この思いがけない幸運のお陰でたいへんたくさんの勉強をさせていただいた。

 

もともと水を守る活動に熱心で、大学教授のご主人とこちらに移り住んだそうで、ただの小川と思っていたこの川のことについて、いろいろなことを発見することになった。

 

手をいきなり流れに入れて、「この川の温度何度ぐらいあると思いますか」と聞かれて、同じように手を入れてみた。水にしてはやや温かい感じはしたが、15℃くらいと応えると、彼女はポケットから取り出した棒状の物を水中に付けた。温度計だった。22℃だった。

その準備の良さに、さすが「シモツケコウホネを守る会」メンバーと感心するばかりだった。

 

今度は水中の葉に手をやる。なにやらじっと観察している。

 

その葉の写真を撮らせてもらった。水中の葉は、薄茶色であまりきれいとは思わなかったが、こうして一葉を手にして眺めてみると、透けるような薄さでみずみずしく、まるでワカメそっくりだった。

 

今度は水中からすくい上げたものはこれだ。「カワニナ」だ。これは蛍の幼虫の餌で、これがいるところには蛍がいる。この田園地帯で時々蛍の姿を見かけるのはこのお陰だ。「カワニナ」の幼虫を見るのは初めてだ。ここに住んでまもなく30年になるのに自然の仕組みにはかなり疎かったようだ。

 

またしばらく水中に手を入れて何かを探していた彼女は「あったあった!」と声を上げてみせてくれたのがこれだ」

 

これは「マツカサ貝」(二枚貝)という。「シモツケコウホネ」を見に来ただけでは全く気がつかなかったであろう発見に感謝・感謝だ。この貝は用水路などの流れのあるところに住んでいる。二枚貝は水の汚れをきらい清流に住むことから、この用水路にながれる水のきれいさを物語っていることにもなる。こんなところにも地域の人の自然を守る姿、生活ぶりが理解できる。

 

この用水路から、この地区の美しさ、きれいさが作る自然の生態系まで学ぶことが出来て大満足だ。何となく流れている道路わきの小川にこんな自然のすばらしさが隠れていたのだ。

 

ちょっと写真を撮りに来ただけなのに、思わぬ発見の連続で夢中になっていたが、太陽は西に沈みかけていた。

ところがこの後にさらに予期せぬ出逢いが続く。誠に残念なことにカメラの電池がここで切れたことだ。いつも持ってくる予備電池だが気軽に出てきたために持ってこなかったために、この後の写真を紹介でないのが残念。

「シモツケコウホネを守る会」の会長柴田由子さんの家は、すぐ左手の家であることを聞いて、さらによって話を聞くことにした。訪問してまたまた驚いたのは、この方のご主人は私の現役時の同僚だったのだ。

会長の奥さんは留守であったが、本人が在宅していて、NHKの収録風景から、当日のこぼれ話、デレクターの話など、詳しく様子を聞くことが出来て、長居になったのはいうまでもない。